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社会・文化

「種苗法改正」で 加速する農業衰退

食料安全保障を外資が脅かす危機

2020年2月号

 一月二十日から始まった通常国会に、少し専門的な法案が提出された。農林水産省が所管する「種苗法改正案」だ。統合型リゾート施設(IR)事業に絡む汚職や、「桜を見る会」の運営などに関する追及が焦点となり、主要メディアはまったく報じないが、改正案は欠陥だらけで、運用次第で農業の根幹である種や苗が外資を含む民間企業に握られ、食料安全保障を脅かす恐れがある。
 種苗法は、植物の新品種を登録することで育成する権利(育成者権)を占有でき、知的所有権として保護することを定めている。改正案のポイントは、種苗の海外への持ち出しの厳罰化と、自家増殖(採種、接ぎ木、挿し木による原種のコピー)の制限の二つだ。
 日本の優れた種苗が海外に流出し、農産物の輸出拡大の障害になっているのは事実だ。例えば、十八年以上かけて開発したブドウ「シャインマスカット」の苗木が持ち出され、中国や韓国で栽培され東南アジアに輸出されている。イチゴも、「章姫」や「レッドパール」を基にした新品種が韓国で開発されて類似品が輸出されている。
 和牛に至っては、すでに海外市場ではオーストラリア産の「WAGYU」が主流・・・