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社会・文化

都立墨東病院「コロナ最前線」の闘い

首都東部「命の砦」が崩れた時

2020年5月号

 「重症コロナの患者が押し寄せています。最近増えているのは、心不全や脳出血、腹膜炎などの他の病気がある人がたまたまCT検査で怪しい影があってコロナだったパターンです。今後、軽症者が(自宅やホテルで療養し)病院に来なくなると、そういう複雑な患者が増えると思われます」
 四月初旬、都立墨東病院に勤務する医師が他で勤務する先輩に送ったメールだ。
 この先輩は新型コロナウイルスが国内に入り、墨東病院が臨戦態勢に入った一月以降、継続的に相談に乗ってきた。彼が心配するのは、新型コロナ対策の最前線に立つ医師たちが孤立無援で燃え尽きようとしていることだ。
 墨東病院は東京都墨田区に位置する広域基幹病院(七百七十二床)だ。国内最大規模の救命救急センター(二十四床)を有し、年間に約二千人の患者を受け入れる。また、都内に四つしかない第一種感染症指定医療機関の一つでもある。十床の感染症病床を有し、常勤医四人からなる感染症科を中心に新型コロナ感染患者の診療にあたっている。
 メディアでは新型コロナと闘う感染症専門医、集中治療専門医の活躍が毎日のように報じられてい・・・