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WORLD

凋落ロシアは中国の「属国化」へ

激変するユーラシア地政学

2020年6月号

「第二次世界大戦以来最大の惨禍」(グテーレス国連事務総長)といわれるコロナ禍で、最大の「敗戦国」はロシアだろう。感染者三十五万人(五月二十四日)と米国、ブラジルに次ぐワースト三位に。原油価格暴落も経済に大打撃を与え始めた。コロナによる死者数は感染者数の割に少ないが、ロシアのメディアは当局による改ざんを伝えた。コロナ感染者は医療体制が脆弱な地方に広がり、経済・社会混乱でプーチン長期体制の基盤が揺らぎつつある。
 凋落するロシアに対して、欧米や中国が働きかけを強めている。特に中国は今年に入って、ロシアからの石油輸入を拡大し、苦境のロシアを支援している。欧米より早くコロナを封じ込め、経済活動を再開した中国の国内総生産(GDP)は今年、ロシアの十倍以上に達する見通しだ。中国はロシアを経済圏に取り込み、中央アジアも含め、ユーラシア一帯が中国の「属国」になる可能性がある。
 米中対立はコロナ問題で、従来の経済・安保の角逐に加えてイデオロギー色を強めた。米国はウイルスを拡散させた共産党体制を問題視し、中国外交もますます強硬かつ横暴になった。中国にとって、プーチン体制崩壊後に親欧米・・・