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政治

官邸不和で歪んだ「対中外交」

奸臣の「路線対立」で損じる国益

2020年6月号

 政権が代わる度に外交政策が変わる国家は、国際社会の信用を失う。ましてや、権力中枢の人間模様が変わる度に外交路線がぶれるようだと、対外的な信用のみならず、国内にも混乱を引き起こす。新型コロナウイルス感染の危機下で起きた総理大臣官邸内の力学の変化で、対中政策が迷走を始めた安倍晋三政権は、後者の典型だ。
 全世界で新型コロナの感染拡大が深刻化する中、三月下旬以降、環太平洋七カ国の外務次官級によるオンライン会議が、毎週開かれるようになった。米国の国務副長官スティーブン・ビーガンが呼びかけ、日本、豪州、ニュージーランド、韓国、ベトナム、インドが参加している。
 日本はこの場で、世界保健機関(WHO)による感染源の早期検証と、安定したサプライチェーンの再構築を求めている。名指しこそ避けながら、中国・武漢のウイルス研究所からウイルスが拡散したなどと主張する米国寄りに立ち、特定の国に依存したサプライチェーンが医療物資不足を招いたとの考えを強調することで、「中国外し」の姿勢を色濃くにじませた。コロナ封じ込めに成功した台湾のWHO加盟を支持する姿勢も、これまで以上に鮮明にしている。{・・・