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WORLD

感染症学者は役に立ったか?

英国がコロナ「欧州最悪」の理由

2020年6月号

 世界最高水準の医学・科学者群を擁しながら、新型コロナウイルス対応で大失敗したのが英国だ。科学に無知な独裁者や、自分の再選にしか関心のない政治家に率いられているわけではない。ボリス・ジョンソン首相は常に「科学を行動指針にする」と言い続けた。それなのに、死者数では世界第二位、欧州最悪という惨状だ。
 底流には、英国が誇る感染症学者群の誤謬がある。感染症学者グループの「モデル」が、別の感染症学者から「推論の域を出ない予測」と退けられるなど、感染症学者間でも対立が露呈した。感染症学者は今でこそ各国で引っ張りだこだが、中身はなお精査が必要なようだ。
 何をやってもうまくいかない時は、相互不信が高まるものだ。
 五月半ば、テリーズ・コフィー労働・年金相は、テレビ出演で政府の失策をさんざん追及され、つい「禁句」を口にした。
「いいですか、もし科学者が間違っていたら、政府への提言も間違うでしょう。そうしたら、私たちが間違った決定をしても、驚くにあたらないでしょう」と、コフィー氏はまくしたてた。政府の失敗は科学者の誤りが原因と言うのだ。
 コフィー氏自・・・