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中国駐在邦人が 「習近平礼賛」の奇怪

対日「心理戦」の巧妙な罠

2020年8月号

 新型コロナウイルス感染の長期化は中国にいる日本人駐在員を想定外の心理に追い込んでいる。コロナで加速した習近平政権の強権政治を礼賛し、香港への国家安全維持法導入にも手放しで賛同する駐在員が現れているという。中国での長期間の自宅待機や閉塞感のなかで、中国共産党的価値観への共感が芽生えている。監禁された被害者が犯人に共鳴してしまう「ストックホルム症候群」の一種と分析する専門家もいる。中国事業の責任者としてビジネス再開への焦りが、経済優先の習政権への共感につながっている面もある。日本企業にとって駐在者のメンタルケア、中国共産党の心理戦への備えが新たな課題になってきた。
「日本批判の激烈さと、中国の対応へのべた褒めぶりに驚きつつ、深い懸念を持った」
 中国の江蘇省、広東省などに工場を展開する日本の大手製造業の中国事業担当役員はこう漏らす。六月初旬に中国駐在の幹部から来た本社を突き上げるメールへの反応だ。この役員自身も長年の中国駐在経験があり、駐在者の心理は理解してきたつもりだったが、「今回は想定外だった」と言う。
 こうした中国駐在員の“異変&rdqu・・・