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連載

本に遇う 第249話

情報源を明かすとき
河谷 史夫

2020年9月号

 奇怪な文章を読んだ。
 週刊文春や文藝春秋の編集長を歴任したという木俣正剛がダイヤモンド・オンラインに出したものだが、文春が情報源として依存した検察担当記者の実名が複数出てくるのである。
 例一 検事総長に吉永祐介がなるとき、「次は根來泰周にする」という密約を政治家が求めた。「そんなことはあってはならないこと、当時の検察記者は各社ともエース級でしたが、NHKの小俣一平記者、朝日新聞の松本正記者が中心となって、文春に詳細な情報を提供してくれます」「そして最終的には、週刊文春がとどめを刺しました」
 例二 税金横領事件捜査の雲散霧消を「検察担当記者たちも、『こんなことはあってはならない』と憤慨していました」「立ち上がったのは、前述のNHK小俣一平記者でした。私たちに、検察の情けない現状を教えてくれたのです」「朝日新聞の松本正記者、東京新聞の村串栄一記者らが、次々と取材メモを私たちに提供してくれました」「最終的には、小俣氏が各社の夜回りでの取材メモをまとめて、編集部に提供してくれます」。
 朝日やNHKに文春通信員がいたわけだ。情報源の秘匿が新聞学の・・・