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経済

東芝株主総会での議決権行使を巡り 経産省とゴールドマン・サックスが暗躍

2020年9月号公開

 七月三十一日に開催された東芝の株主総会で、車谷暢昭CEOは賛成比率五七%台で再選された。しかし、議決権行使を巡り、車谷氏を傀儡として使い続けたい経済産業省と、アドバイザーのゴールドマン・サックス証券が露骨な圧力をかけたと取りざたされている。
「総会一週間前に出てきた票読みでは車谷氏への賛成比率は四八%から五二%にとどまっており、解任される恐れがあった」(政府関係者)。慌てた経産省は、一五%超の保有比率であった筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントに対し、外為法の審査をちらつかせ、保有比率を一〇%未満に下げさせた。一方、約四%を保有していた3Dインベストメント・パートナーズは、一・一%分の議決権が、「期日を超えて用紙が届いた」として行使を認められなかった。しかし、用紙は七月二十七日に都内で発送したとされ、「三十一日に届いた」という東芝の説明に3Dは疑義を呈している。
 極め付きは、ハーバード大学の年金ファンドであり、東芝の株式を四%弱保有するハンター・パットンが投票に参加しなかったことだ。パットンはエフィッシモにも出資しており、「東芝株をエフィッシモと共同保有していると見なされれば、合計で一〇%を超え外為法の審査が通らなくなる」と脅された。ゴールドマン・サックスのM&A統括責任者は国内の記者筋に「『エフィッシモはハーバードの言いなり』と触れ回り、共同保有の印象を植え付けた」(経済誌記者)という。
 さらに、ゴールドマンは「持田昌典社長自らGPIFの前最高投資責任者(CIO)である水野弘道氏に働きかけ、同氏の知人であるハーバード大学の運用担当者にコンタクトを取らせたらしい」(同社関係者)という念の入れようだ。水野氏は世界最大規模の年金ファンドGPIFのバックグラウンドを都合よく利用し、カルパースなど米国の年金ファンドにも広く顔が利く。そんな水野氏を五年前にGPIFのCIOに引き立てたのは世耕弘成元経済産業大臣。水野氏は世耕氏の口利きで今年五月から経産省参与に就任している。「世耕氏は、子飼いであり東芝を担当している西山圭太商務情報政策局長(当時)より要請を受けて、水野氏に根回しした」(経産省関係者)とされる。まさに、なりふり構わぬ官民一体の圧力劇だった。


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