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政治

菅政権「親中傾斜」の危うさ

米中の狭間で覚悟なき宰相

2020年11月号

 未知数だった菅義偉の外交・安全保障の手腕を占う試金石となった総理大臣就任後の初外遊、ベトナムとインドネシアの歴訪(十月十八日~二十一日)は、はしなくも菅の「親中DNA」を露見させる機会となった。「安倍路線の継承」を掲げて自由民主党総裁選に勝利した菅が、こと中国との関係では、前総理大臣・安倍晋三の強硬路線から融和路線に軸足を移すとささやかれ始めている。
 越尼両国歴訪に関する新聞各紙の評価は、中国に対する牽制なのか、配慮なのかをめぐって割れた。前者の観点では朝日新聞が「にじむ対中牽制色」と振り返り、読売新聞は「けん制と配慮」と両面に言及する見出しをとった。これに対し、毎日新聞が「関係改善にらみ配慮」と、同じリベラル系でも朝日とは対照的に報じたのは、保守系の産経新聞が論壇時評で、菅の対中政策を「『アキレス腱』にせず強硬姿勢貫け」とやり玉に挙げたのと、菅の外交姿勢の分析という点では共通している。
 牽制論は、安倍の進めた「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」構想を菅も踏襲する姿勢を示したことを根拠とする。中国はことあるごとに「FOIP構想は対中包囲網」と見て反発・・・