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経済

《クローズ・アップ》楠見 雄規(パナソニック次期社長)

九年ぶり交代でも高まらぬ期待

2020年12月号

 パナソニックは二〇一二年に就任した津賀一宏社長(六十四歳)が会長に退き、楠見雄規常務(五十五歳)が来年六月に社長に就任することを発表した。
 楠見氏は来年四月にCEOに就くとはいえ、同年六月の社長交代を早々と発表した点に「新商品、新技術など明るい話題に乏しく、見限られつつあるパナソニック」(関西の電機業界関係者)の事情が透けてみえる。五十歳代半ばの次期社長の登場は「津賀氏の顔はもううんざり」というメディアでも飛びつくはずのニュースだったが、経済紙・誌の書きっぷりには期待感もみえず、まったく盛り上がらなかった。
 それもそのはず、旧松下電器産業入社の楠見氏の会社人生はパナソニックの衰退期そのものだからだ。会見で語った成功体験は「デジタル放送のdボタンとDVDレコーダー『ディーガ』」くらい。旧松下電産がVHS規格のビデオレコーダーで世界を制し、グローバル企業にのし上がった歴史とは比べるべくもない。むしろ「日本のエレクトロニクス業界最大の失敗」と呼ばれる、プラズマディスプレイからの撤退など負の歴史に彩られている。
 楠見氏が現在、担当するオートモーティブ事業も・・・