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ウクライナを絡め取る中国の邪念

ミサイル・軍需産業「乗っ取り」が狙い

2021年3月号

 ウクライナと言えば、ドナルド・トランプ前米大統領の最初の弾劾裁判で、トランプ陣営の不正の舞台として、共和、民主両党の激しい綱引きの場になった国だ。ロシアが支援する武装勢力にクリミア半島と東部を占領されるという、戦争の悲劇も味わっている。ジョー・バイデン大統領の就任とともに、今度は米国と中国の綱引きの最前線に躍り出た。
 ウクライナという国名の語源は諸説あるが、スラブ語で「境」を意味する「クライ」に由来するという見解が有力だ。境界の地、辺境の地といったところ。歴史的にも、ロシア人とドイツ人(およびポーランド人)に挟まれ、字義通りの役柄だった。
 民族はスラブ系で、色白の長身は、強い印象を残す。第二次世界大戦中に、ウクライナから労働力を徴用したドイツでは、「ウクライナの少女たち」の華やかさが、いかに戦時下の農村を明るくしたかの記録が残っている。

積み上がる対中債務

 二十一世紀にやってきたのは、中国人だ。猛烈な勢いでウクライナ市場に食い込み、性能の劣るロシア製品を駆逐した。二〇一九年に、ロシ・・・