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連載

西風 478

「藤田財閥」ルーツの行く末

2021年3月号

「六十余年、永きにわたりご愛顧いただき誠にありがとうございました」
 二月十二日付で藤田観光のホームページには太閤園の営業終了について、こう記されている。
 大阪城の北、広大な公園に隣接する場所に、塀で囲まれた一角がある。大阪で「ええとこの子」が結婚式を挙げることで知られる太閤園だ。二〇一九年にはG20大阪サミットの会場にもなったが、運営する藤田観光は今年六月で営業を終了した後、敷地を売却すると発表した。藤田観光といえば東京都文京区のホテル椿山荘東京が有名だ。また、ビジネスマンにとっては全国に展開するワシントンホテルでお馴染みである。今回、同じ敷地にある桜苑や、大阪市中央区のオペラ・ドメーヌ高麗橋といったウェディング施設も営業を終える。藤田観光関係者が語る。
「太閤園は、ルーツである藤田家ゆかりの場所。経営陣にとっても断腸の思いだろう」
 太閤園は、藤田傳三郎男爵が明治末期に子息のために建てた「網島御殿」が前身になっている。戦後になってから宴会場に生まれ変わり、日本庭園に建つ築百年を超える料亭は、大阪の政財界の要人によって重用されてきた。
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