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社会・文化

被災地「公共事業」はもう止めろ

今本博健(京都大学名誉教授)

2021年3月号

 ―東日本大震災から十年が経ちますが、この間の復興事業のありかたに、どんな問題がありましたか。

 今本 「国土強靭化」の名のもとにたいして批判もされず実施されてきた。十年という節目に、復興とはなにか、被災地にとってベターなことはなにかを検証するべきだ。この間は、あまりにもムダが多かったと思う。強靭化という用語の持つ問題点は、言葉の意味そのものは悪いことではないため、反対しづらいという点だ。その陰で、実際には効果のあまり期待できない公共事業が山のように行われた。

 ―ムダの代表例はなんでしょう。

 今本 各地に造られたハコモノなどだが、最大のものは巨大津波に備えるとして東北の沿岸部に四百キロメートルにわたって整備されている巨大防潮堤だ。景観や潮流への懸念が指摘されているが、深刻な問題は寿命だろう。コンクリートは人類がみつけた優れた建設材料だが、耐用年数については完全にはわかっておらず、すでに各地の橋梁やトンネルなどが完成から数十年程度で崩れ始めている。東北・・・