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経済

電力三社「カルテル事件」の内幕

公取委の「情報源」とその思惑

2021年5月号

 関西電力からは強い怨嗟が伝わってくる。
「けったくそ悪い! せやから、営業出身の社長はあかん言うのや」
 四月十三日、公正取引委員会は関電、中部電力および販売子会社の中部電力ミライズ、中国電力の四社を独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査した。二〇一八年以降、企業向けの電力販売で互いの営業活動を制限するカルテルを結んだ容疑であり、午前九時、一斉に踏み込んだ審査官は総勢百人近い大規模なものだった。
 公取委の情報源はどこだ―、慌てた電力業界は様々な臆測が交錯したが、その日のうちに浮かび上がったのは中電。本店および子会社に四十人と最も多い審査官が投入されており、しかも、公取委は中電ミライズと家庭向けの電力・ガス販売で競合する東邦ガスにも立ち入り検査をしていた。中電社長・林欣吾を追い落とすための内部告発、それが騒動の原因と合点されたのである。
 なぜなら、昨年四月に就任したばかりの林は事実上、電力業界初の営業部門出身のトップだからだ。直前まで販売カンパニー(現中電ミライズ)社長を務めており、まさにカルテルの当事者である。
 電力業界には営業部門・・・