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経済

コロナ死続発「アジア駐在員」の惨劇

日本企業「社員棄民」という犯罪

2021年8月号

 コロナ感染が再び急拡大したインドネシア、タイはじめ東南アジアで日本人駐在員の感染、死亡が急増している。波状的に襲ってくる感染を軽視した判断の甘さもあるが、工場の稼働維持、現地法人の管理などビジネスを最優先する発想が再び強まった最近の日本企業の現実が底流にある。現地の日本大使館も平時は「官民協力」、危機時は「民間のことは民間」という狡猾さが目につく。今や日本経済の主力エンジンとなったアジアビジネスは現地駐在員とその家族に支えられながら、彼らを見捨てる「棄民政策」の上に成り立っている。
 インドネシアのコロナ感染は七月にはインドやブラジルを抜き、世界最悪の状況になった。一日の感染者数が五万人を超え、数千人が亡くなる状況そのものが驚きだが、そのなかで日本人駐在員が七月下旬までに二十人前後亡くなったことは日本の企業社会にとって衝撃的であった。
 邦人が海外で犠牲になった事件としては、二〇一三年のアルジェリア人質事件で日揮(現在は日揮ホールディングス)と関係会社社員の合計十人が犠牲になったのが最悪のケースだ。一六年にバングラデシュのダッカのレストランが襲撃され、国際協力機構・・・