三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

アジア軍拡の主役「極超音速兵器」

ミサイル防衛は時代遅れの「遺物」に

2021年8月号

 米国と中国、さらにロシアとの軍備拡張競争が、極超音速(音速の五倍以上)の巡航ミサイル分野で急速に進んでいる。
 太平洋地域では、米国はミサイル配備数で中国に劣っており、極超音速ミサイルでの挽回を急いでいる。一方の中国は、日本と米国のミサイル防衛(MD)網を無力化する切り札として、極超音速ミサイルの開発を進める。
 極超音速ミサイルは、少し前まで「SF兵器」扱いだったが、今や東アジアの軍事バランスの主役に躍り出る。日本などが積み上げたミサイル防衛が時代遅れの無駄と化すばかりか、各国の基地網も大幅見直しに向かう可能性がある。

開発で先行する中国とロシア

 今年七月、米フロリダ州エグリン空軍基地で、米軍関係者待望の実験が成功裏に行われた。米空軍の極超音速ミサイル「AGM-183ARRW(空中発射高速応答兵器)」は、何度かの失敗を経て、ようやく成功にこぎつけた。
「空中から発射し、高高度で飛行する極超音速ミサイルだ。いろんな点で『初』の称号を持つ、最新兵器だ。もちろん、開発担当者にも『・・・