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連載

広告を裏読みする 第33話

「カジノ推進広告」という徒花

2021年9月号

「これで首都圏の具体的なIR(統合型リゾート)計画は消滅してしまった」
 大手旅行会社の関係者はこう肩を落とす。八月二十二日に投開票が行われた横浜市長選挙で、IR反対を訴えた山中竹春氏が当選したことで、同市の誘致計画は白紙になる。
 投票二日前、朝日新聞、読売新聞の朝刊、神奈川県版に意見広告が掲載された。これは市長選挙告示二日前の神奈川新聞に掲載されたものと同一だった。
 全面を使ったカラー広告の中央部分には「IR(カジノを含む統合型リゾート)は、いけないものなのでしょうか?」と大書してある。広告主は、「横浜型IRの実現をめざす市民の会」という団体だ。メンバーは、地元商店街や経済界、青年会議所の有志だという。
 特に「元町商店街の関係者が多く加わっていた」(情報筋)。同商店街は横浜市がIR候補地としている山下埠頭にほど近く、観光客増加の恩恵が大きい。また、カジノ反対を打ち出した「ハマのドン」、藤木幸夫氏の息子である幸太氏も、今回の広告主になったカジノ賛成派に近い立場にある。
 広告では「IRは治安を悪化させません」「IRはギャンブル依存・・・