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経済

《企業研究》塩野義製薬

コロナ「経口治療薬」開発の成否

2021年9月号

 塩野義製薬の評価が急上昇中だ。年初に五千六百二十七円だった株価は、六千八百四十二円(八月二十七日)に上昇した。八月六日、塩野義が開発中の新型コロナウイルス(以下、コロナ)の治療薬(開発番号S-217622)を年内にも厚生労働省に承認申請する方針を明かしたからだ。わが国を代表するウイルス治療薬メーカーの「コロナへの挑戦」に期待は高まるが、難題も山積している。
 この薬剤は経口薬(飲み薬)で、軽症から中等症患者が対象。塩野義は七月二十二日から、国内の二十~五十五歳の七十五人の健常人を対象とした第一相臨床試験を始めた。この試験は九月、第二相臨床試験は十一月に終了する予定だ。第三相臨床試験の結果を待たず、承認申請する。年末までに国内で百万~二百万人分の薬剤を供給できるように体制を整備するという。
 コロナパンデミックの克服には、ワクチンと治療薬の開発が必須だ。ワクチンは米ファイザーや米モデルナを含め複数の製薬企業が開発に成功し全世界に供給されている。一方、治療薬の開発は遅れている。わが国でも、米ギリアド・サイエンシズが開発したレムデシビルや米イーライリリーが開発したオルミ・・・