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経済

中部電力が「黒い太陽光」の泥沼へ

子会社の「乱開発」が社会問題に

2021年10月号

「社長は約束を守っていない。リニア新幹線に対峙する川勝(平太・静岡県)知事のように、われわれは本件に断固反対する」
 六月二十五日に開かれた中部電力の株主総会―。ある株主が経営陣をこう批判すると、周囲から「そうだ、そうだ」と気勢が上がった。応対した中電副社長の水谷仁は「住民の理解を得る努力は惜しまない」と通り一遍の回答に終始し、質疑応答は噛み合わない。
 電力会社の株主総会といえば、原発反対派との押し問答が恒例行事だ。しかし、この案件はそうではない。再生可能エネルギーの大型開発である。
 中電の電気工事子会社、トーエネックが静岡県函南町で進める出力三万キロワットの太陽光発電プロジェクトに住民の怒りが沸騰しているのだ。建設予定地は、伊豆半島を横貫する東海道本線丹那トンネルの北側の山林にあり、そこを伐採して六十五ヘクタール(東京ドーム十三個分)の広大な敷地を開き、十万枚の太陽光パネルを敷き詰める計画である。が、予定地は砂防指定地、土石流危険渓流などが集中し、麓には小学校もある。自然災害のリスクは大きい。
 そのリスクが現実となり得ることを、中電経営陣・・・