三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

過熱する企業買収「攻防戦」

新生銀と東京機械が策す「禁じ手」

2021年10月号

「やっぱり北尾さんは天才的な策士。西村あさひ法律事務所をあらかじめ自陣営に引き込んでおくんだから」。SBIホールディングス(HD)が新生銀行にしかけたTOB(株式公開買い付け)をみて、ある金融関係者はこうつぶやいた。
 どういうことか。SBIHD社長北尾吉孝にとって、このTOBが敵対的になることは百も承知。言い換えれば新生銀に買収防衛策で対抗されるのも想定の範囲内だった。新株予約権を駆使した複雑な買収防衛策が繰り広げられることになると、法廷戦術も想定した軍師役となるリーガルアドバイザーの優劣が勝敗に直結する。
 北尾は早々に西村あさひを雇う。新生銀はアンダーソン・毛利・友常法律事務所(AMT)。北尾が西村あさひを囲ったのは、「太田洋弁護士を敵に回したくなかった」(SBI関係者)からだろう。
 北尾も恐れる太田は、いまや西村あさひのエース弁護士として飛ぶ鳥を落とす勢いだ。一九九一年に東京大学法学部を卒業しハーバードロースクールを経て西村あさひに勤め、M&A取引やガバナンスのプロとして名を上げてきた。
 二〇二〇年の日本経済新聞社による「企業が選ぶ弁・・・