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経済

米国の「インフレ」が世界に波及

長引く「海運パニック」が元凶

2021年11月号

「今後数カ月間、物価は高止まりが続く可能性が高い」。ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は九月二十八日、議会でこう述べた。米国の九月の消費者物価上昇率は前年同月比五・四%と五カ月連続で五%を超えた。「インフレは一時的」とする主張はもはや鳴りを潜めつつある。来年の社会保障受給者の生活費調整(増額分)は過去四十年で最大の増加で、インフレの長期化を示唆する。原因の一つが「物流の混乱」。国内のみならず世界にインフレをまき散らす元凶となっている。
 港湾が物流のボトルネックとなる状況は悪化の一途で、コンテナ運賃を四倍に高騰させた。パンデミックを契機に始まった物流の混乱は、今も悪化を続けている。

物流のシステムが崩壊

「今日は、いいニュースがあります。アメリカ全土への商品配送をスピードアップするお手伝いをします」。十月十三日、バイデン大統領は満足げにこう述べて、サプライチェーンのボトルネックとなっていたロサンゼルス港、隣接するロングビーチ港(両港合わせてLA/LBと呼ばれ、海運貨物取扱量の四割・・・