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連載

西風 487

人気が出てきた「丹波ジビエ」

2021年12月号

「丹波」と聞いて、京都府を思い浮かべるか、兵庫県を想起するか人によって分かれるだろう。京都府には京丹波町と南丹市があり、兵庫県には丹波市と丹波篠山市が並存している。古く「丹波の国」が、現在の行政区分の京都と兵庫に主にまたがるエリアだったことが遠因だ。それぞれの地元民の「丹波」への思い入れは強い。二〇一九年五月一日、平成から令和への改元があったこの日、旧篠山市は丹波篠山市へと名称を変更した。市町村合併を伴わない名称変更は極めて異例だ。〇四年に隣接した自治体が合併して丹波市が発足したのに触発された。「丹波の黒豆」「丹波栗」など、丹波の名称価値は高い。「篠山では弱い」という住民の声を受け、コストをかけてまで改称したのだ。
 前述した四つの市町に加え、旧丹波の国に含まれる、京都府の亀岡市、福知山市、綾部市を加えた七市町のエリアを「大丹波」と称する。県境を越えた観光振興連携も盛んになってきた。
 これからの季節、丹波エリアの名物といえば「牡丹鍋」だ。イノシシの肉をなぜ牡丹と呼ぶのかについては諸説ある。ただ、味噌仕立ての牡丹鍋の発祥が丹波であることは丹波篠山市のサイトでも公言し・・・