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連載

広告を裏読みする 第37話

スポーツ「ご祝儀広告」の諸事情

2022年1月号

 十二月十二日、日本経済新聞の朝刊に掲載された本田技研工業の全面広告が、モータースポーツファンの間で話題となった。
 ホンダはこの日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催されるフォーミュラ1(F1)のシーズン最終戦に臨んだ。今シーズンでのF1撤退が決まっていたホンダとしては、並々ならぬ思いで臨む戦いである。広告では、ガレージからレースに向かうマシンの後ろ姿の写真とともに、感謝の言葉が綴られていた。「ありがとうフェラーリ」「ありがとうロータス」「ありがとうブラバム」……。一九六四年に本田宗一郎がF1に参戦して以降、しのぎを削ってきたライバルたちに感謝の辞を並べたのだ。
「じゃ、最後、行ってきます。」という軽い言葉で締めくくられ、ホンダは最終戦に向かった。
 この日は、最後の戦いであると同時に、年間チャンピオンに輝けるかどうかが懸かった大一番だった。結果からいえば、レッドブル・ホンダのフェルスタッペン選手が劇的な逆転勝利を収めて、ホンダに三十年ぶりの栄冠をもたらした。ホンダの全面広告は、図らずも劇的な最終幕を前祝いするかのよう・・・