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連載

皇室の風 第166話

天皇家の執事Ⅳ
岩井 克己

2022年6月号

 平成の天皇・皇后が皇太子夫妻時代に重ねていた外国訪問は三十六カ国。うち皇太子夫妻の資格で訪問したのは八カ国にすぎず、二十八カ国は昭和天皇の名代としての訪問だった。
 元侍従長渡邉允へのインタビュー(二〇〇九年)では、名代として国を負って外国に赴く厳しさと「覚悟」に加えて、その長い年月に積み重ねた親善の厚み、深みに及んだ。

       ◇

渡邉:ひとつ非常に具体的で説明しやすいと思うのはノルウェーの王室との関係ですね。二十世紀の初めにスウェーデンから独立して、デンマークから王子が招かれ初代国王ホーコン七世が即位した。陛下が初めて外国に行かれたのが一九五三年のエリザベス女王の戴冠式。帰りに欧州の国々を回られて、ノルウェーも訪問された。当時、すでに高齢でしたが、初代国王がご存命で、夕飯かなにかに招いてくださった。その時、丁重にもてなされたのをよく覚えていらっしゃる。それで今度は八三年に二代目の王様オラフ五世が国賓で来られ、その答礼で八五年に昭和天皇のご名代の形で訪問なさった。その時にはオラフ五世がお迎えになったが、昭和天皇の崩御のあと・・・

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