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連載

新大学評判記 第30話

福井県立大学「恐竜学部(仮称)」

2022年6月号

「埋没大学」の哀しき奇策

 JR福井駅を降りたち、外に出ると、旅行客は映画『ジュラシック・パーク』気分を一瞬味わえる。福井県内で発掘された「フクイラプトル」「フクイサウルス」「フクイティタン」の三頭の恐竜の巨大モニュメントがそそり立っているからだ。駅前一等地に配置するほど福井県民にとって、恐竜は重要であり、地域の誇りでもある。
 国立の福井大学とともに福井県を代表する学術教育機関である福井県立大学もその「恐竜愛」を共有している。「恐竜学部」(仮称、二〇二五年四月開講予定)の新設を決めたからだ。産経新聞は「恐竜学部の開設は全国初」と日本メディアの悪弊の「初物」報道で大々的に伝えたが、当たり前の話だが日本に恐竜学部が三校も四校もあったら困りものだ。
 恐竜学部と聞いて、何を学び、研究する学部なのか、卒業後にどんな就職先があるのか、思いつく人はほとんどいないだろう。恐竜そのものは古生物学の研究領域であり、世界的には発掘調査から骨格復元、複数の恐竜骨格の比較から進化をたどるといった研究が広く存在している。恐竜が生息していた中生代の三畳紀、ジュラ紀、白亜・・・

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