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EU内で増長するポーランド

独仏と「欧州の理念」の退潮鮮明に

2022年7月号

 ウクライナ戦争後、欧州連合(EU)内でひときわ発言力を増した国がある。東欧ポーランドだ。同国の右派ポピュリスト政権はこれまで、強権的手法を批判され、西欧諸国から針のむしろに座らされていた。それが今や、積極的な難民受け入れや軍事支援でウクライナとの強い連帯を示し、EUの対露世論をリードする存在となっている。だが、法の支配など「欧州の価値観」を無視したまま影響力を強めるポーランドは、EUの形を歪ませる。
「ポーランドがEUの資金を得るための困難が突破されたことは、非常に喜ばしい」。六月二日、ポーランドのドゥダ大統領は、ワルシャワを訪れたEUのフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と共同記者会見に臨み、満足げに語った。
 欧州委員会はその前日、新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ経済を立て直すためのEUの復興基金から、ポーランドに三百五十四億ユーロ(約四兆九千億円)の資金提供を行うことを承認した。欧州委などEU執行部はかねてポーランドの司法改革が法の支配の原則を損ねていると非難し、同国への基金分配を留保してきたが、ようやくゴーサインを出した形だ。「欧州は一つ。EUの・・・