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イタリア「倒閣」を 仕掛けた黒幕

「親プーチン」が広がる異様な国情

2022年8月号

イタリア政治でまれな安定を誇った、マリオ・ドラギ首相が七月二十一日、辞任に追い込まれた。総選挙は九月二十五日だ。
 英国のボリス・ジョンソン首相が七月七日に、保守党党首の辞任を表明した直後のこと。半月足らずで、北大西洋条約機構(NATO)の主要国二カ国で政変が起きたのは偶然だったのか。ロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領は「次は誰だ?」と、NATOをあざけるように、SNSから発信した。

沈黙を守った二人のキーマン

 イタリア紙のある政治部デスクは、ドラギ辞任を受けて「ずっと気になっていたことがある」と語った。二月にロシアがウクライナ侵攻を開始した後、イタリア政界の二人の重要人物が沈黙を保っていたことだという。
 まず、通算九年以上も首相を務めたシルビオ・ベルルスコーニ氏。現在は欧州議会議員だが、イタリア政界に隠然たる影響力を保つ。
 同氏は四月、自らが率いる政党「フォルツァ・イタリア」の会議で登壇し、侵攻について「がっかりした。悲しいよ」と語った。また、ロシアのウラジーミル・・・