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経済

日本風力開発「偽装応札」が大成功

贈賄犯罪企業に「大甘」の経産省

2023年12月号

 それは断末魔の悪あがきか、いや、手口はもっと狡猾だ。風力発電ベンチャーの間には憤怒の声が渦巻く。
「世間を騒がせた刑事被告人が国の制度を悪用して大儲け、そんなことが許されるのか!」
 十一月二日に開札された経済産業省の今年度の陸上風力入札―。多くの応札者はその結果に落胆し、同時に不審を抱いた。入札量百万キロワット(kW)に対し、応札量は百五十六万kWと多く、二十件の落札価格も一kW時当たり平均十四・〇八円と予想外の安値だ。落札者リストを見ると、とりわけ目を引く名前があった。
 松本智―。二十件のうち八件の落札プロジェクトの代表者を兼務している。いったい誰か……。やがて日本風力開発(JWD)の執行役員だと判明したとき、応札者の不審は怒りに変わった。
 JWDは周知の通り、八月に発覚した洋上風力の贈収賄事件の当事者だ。当時の社長・塚脇正幸は、衆議院議員の秋本真利に七千二百万円を資金提供し、見返りに自社に有利な海域の入札斡旋や入札ルールの変更を依頼したとされ、九月二十七日、秋本とともに東京地検特捜部に起訴された。その〝風力・・・