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連載

皇室の風 第184話

四方拝と石灰壇
岩井克己

2024年1月号

 宮中の年越しは、大晦日に半年分の罪穢れを清める「節折」と「大祓」で年を締めくくる儀式から始まる。前者が天皇・皇后・皇太子、後者が皇族代表・国と国民すべてに対するお祓いである。
 節折は、六月、十二月の晦日に行われる。天皇の体の寸法を侍従が測った竹や、天皇が呼気を吐きかけた衣服、赤土器の壺などを、穢れを移した「贖物」として始末する。以前は東京湾品川沖に流すとも、土中に埋めるなどとも言われていた。
 午後二時、宮殿の鳳凰の間で、日常着の略服「お小直衣」を着した天皇が、白絹の衣服、紅絹の衣服にそれぞれ三回呼気を吹きかけて罪穢れを移す。そして侍従が九本の竹で天皇の体の寸法を数回にわたり測る。背丈全体、肩から足、胸から指先、腰から足先、ひざから足まで―と竹に墨汁で印をつける。その竹を掌典が受け取って印の個所でぽきりと音をたてて折る。さらに天皇は麻で自分の体をなでて穢れをはらい、侍従が捧げる赤土器の壺の中に呼気を三度吹きかける。神嘉殿では午後三時から皇族、宮内庁幹部ら関係者が参列して、国と国民すべての罪穢れを清める「大祓」の儀が行われる。
 本連載の前回でアーネスト・・・

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