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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》ガソリン補助金

この凄まじき亡国の「大衆迎合」

2024年4月号

「リッター百七十五円程度の小売価格、これを実現することと致します」
 振り返れば、昨年八月三十日、記者会見した首相・岸田文雄のこのひと言が事態を深刻化させたと言っていい。代表的なコモディティ商品であるガソリンを「公定価格」にしてしまったのだ。
 燃料油価格激変緩和対策事業―。高騰する小売価格(全国平均)を国費で補塡する、いわゆる「ガソリン補助金」は二〇二二年一月に導入された。その後六回、期限延長され、とりわけ昨年九月七日から発動された新制度は常識外の税金乱費だった。それまでは補助金の支給額と補助率に上限があったが、補塡後の小売価格が一リットル百八十五円を超えた場合、全額補助に改められ、青天井となったのである。
 新制度は、同年九月四日に記録した小売価格の史上最高値百八十六円を見越し、「何としても百八十五円以下に抑える」という政府の意思表示にほかならない。しかも、岸田が不用意にターゲット価格に言及した結果、ガソリンは高止まりのまま動かなくなった。
 地域格差はあるが、現在、首都圏や中部圏の給油所のサインポールに掲げられている看板価格はほぼ百七十五円・・・

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