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経済

《クローズ・アップ》関根 正裕(商工中金社長)

完全民営化後の「ドン」の野望

2024年5月号

財務省は中小企業向け融資に特化する政府系金融機関である商工組合中央金庫(商工中金)の政府保有株46%を、来年3月末までにすべて売却すると発表した。民営化の手綱をとるのは、岸田文雄首相の開成高校時代の同級生、関根正裕社長(66歳)。
岸田政権は直近の支持率が20%前後と記録的な低さとはいえ、国家の最高権力者であることに変わりはなく、その青春時代からの昵懇の友人が操る金融機関に地方銀行や信用金庫は早くも警戒心を露わにしている。
商工中金は中小企業の健全な発展を金融から支える目的で、日中戦争が激化する1936年に設立された特殊会社。官民共同出資という極めて異例の存在だ。戦後の歴代トップにはほぼ経済産業省出身者が天下っている。官のカラーが強いために地方では敬遠され、地元の信用が厚く融資案件の扱いでも百戦錬磨の地銀、信金には歯が立たず、経産省の制度融資の窓口程度にしか見られていない。
その甘い体質を暴露してしまったのが2017年に発覚した危機対応融資における多数の不正。東日本大震災などで経営が行き詰まった中小企業の救済のための利子補給を柱とした融資だが、商工中金は経・・・

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