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社会・文化

酒と「がんリスク」の本当の話

怯える左党に一筋の光明

2025年5月号

「酒は百薬の長」―。古くからそう言われてきた。それが「酒は百害あって一利なし」という飲酒批判が近年、世界中で広がっている。少量の飲酒でも発がんリスクが高まるという研究結果が重なっているからだ。世界保健機関(WHO)も同じ立場だ。今や、「ちょいと一杯」でもまずいのか。酒の効用は切り捨てられてしまうのだろうか。
 飲酒批判の最右翼は米国政府だ。今年1月3日、保健福祉省のマーシー医務総監は、アルコール飲料のラベルにがんリスクの警告を含めるよう勧告した。米国民がアルコールの危険性を十分に認識していないと考えているからだ。このような動きは米国にとどまらない。カナダ・ノースウエスト準州では2023年酒類にがんリスクを警告するラベルを貼ることを一時義務付けた。アイルランドでも18年に同様の義務付けをする「公衆衛生(アルコール)法」が成立した。
 民間レベルでも、運動は盛り上がっている。英国の慈善団体「アルコールチェンジUK」は、13年から毎年1月の1カ月間は禁酒をする「ドライ・ジャニュアリー」というキャンペーンを展開している。欧州を中心に世界に広がり、24年にはフランスだけで45・・・

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