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連載

金融の世紀

第29回【SGウォーバーグの興隆】
黒木 亮

2025年5月号

 1963年にユーロ債市場を創設した英国の有力マーチャント・バンク、SGウォーバーグの創業者、シーグムンド・ジョージ・ウォーバーグは、1902年、ドイツ中部のニーダーザクセン州ゼーブルクで、ユダヤ人銀行家の子として生まれた。
 一族は、1798年に歴史を遡る、ハンブルクで2番目に大きな銀行、MMウォーバーグ(M.M. Warburg & Co.) を経営していた。同行は今日もプライベートバンキングに重点を置く投資銀行として生き永らえている。
 シーグムンドは、ハンブルクの名門ギムナジウム(日本の小学5年生から高校3年生に相当する生徒が通う中等教育機関)などで勉強した後、1920年、伯父のマックス・ウォーバーグが社長を務めるMMウォーバーグに入社した。同社在籍中、ともにユダヤ系のロンドンのNMロスチャイルド&サンズや米国のクーン・ローブ商会(後のリーマン・ブラザーズ)に派遣されて修業を積み、1930年にパートナーに昇格した。
 1934年、31歳のシーグムンドは、反ユダヤ政策を掲げるヒトラーの台頭を怖れ、ドイツから英国に亡命し、ニュー・トレーディング・・・

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