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政治

極まる「大衆迎合政治」

与野党「減税狂騒曲」の醜い調べ

2025年5月号

 自分の財布ではないから、浪費に躊躇も痛痒も感じない。自分は逃げ切れると思うから、次世代への想像力が働かない。有権者を朝三暮四の故事の猿とばかりに見下しているから、バラマキ政策で歓心が買えると考える。物価高や「トランプ関税」への対策として与野党双方にくすぶり続ける消費税減税を求める声が物語っているのは、利害調整という役割を自己利益の最大化とはき違えたポピュリズム政治の病巣の深さだ。
 減税狂騒曲のテンポを一気に上げたのは、安定税収である消費税の減税には最も慎重であるはずの政権トップだった。
 3月28日の参議院予算委員会で、立憲民主党の川田龍平から物価高対策として食料品の消費税を軽減税率が適用されている現行の8%からゼロとする案の是非を問われると、総理大臣の石破茂は「一概に否定するつもりはない」と答え、委員会室に衝撃が走った。
 官僚は、消費税は膨張する社会保障費の重要な財源だとして「ゼロ税率化」を否定する答弁を準備したが、石破は良くも悪くも国会答弁は自分で考えたことを口にする。外国では日本の消費税率より遥かに高い税率からの食料品の減税や、減税期間が数週間・・・

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