《企業研究》NTTデータ
親会社の完全統合は「国民の悲劇」
2025年8月号
初値131万円―。NTTデータ通信の初代社長・藤田史郎(故人)は、1株104万円の公募価格を大きく上回って取引が始まったとき、万感の思いを込めてこう語った。
「株式上場(東証第二部)を無事果たすことができた。情報サービス企業として知名度を高め、次は東証一部を目指したい」
1995年4月26日のことである。電電公社(現NTT)のデータ通信本部を嚆矢とする同社は万年赤字の事業体だったが、88年にNTTから分離し、藤田は紆余曲折の末、ようやく悲願を成就させたのだ。このとき、NTTは470億円の子会社上場益を手にしている。が、それを快くは思っていなかった。
なぜなら当時、最大子会社の上場がNTTの分離分割政策の成功例となることを怖れていたからだ。実際、藤田の意向を撥ね付け、東証一部への上場は頑として許さなかった。
それから丁度30年―。NTT社長の島田明は5月8日、持ち分58%の現在のNTTデータグループ(データG)を完全子会社化すると発表した。すでにTOB(株式公開買い付け)は成立、データGは8月下旬の臨時株主総会で全株取得を決議し、上場廃止と・・・
「株式上場(東証第二部)を無事果たすことができた。情報サービス企業として知名度を高め、次は東証一部を目指したい」
1995年4月26日のことである。電電公社(現NTT)のデータ通信本部を嚆矢とする同社は万年赤字の事業体だったが、88年にNTTから分離し、藤田は紆余曲折の末、ようやく悲願を成就させたのだ。このとき、NTTは470億円の子会社上場益を手にしている。が、それを快くは思っていなかった。
なぜなら当時、最大子会社の上場がNTTの分離分割政策の成功例となることを怖れていたからだ。実際、藤田の意向を撥ね付け、東証一部への上場は頑として許さなかった。
それから丁度30年―。NTT社長の島田明は5月8日、持ち分58%の現在のNTTデータグループ(データG)を完全子会社化すると発表した。すでにTOB(株式公開買い付け)は成立、データGは8月下旬の臨時株主総会で全株取得を決議し、上場廃止と・・・