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経済

アサヒビール「サイバー重症」の代償

元には戻らぬ深刻な「損失」

2025年11月号

 中国の神話では「麒麟」は泰平の世に現れる神聖な生き物、いわゆる「瑞獣」とされているが、アサヒにとってはとんでもない疫病神だったようだ。
 アサヒビールを中核とするアサヒグループホールディングス(GHD)が「Qilin(キリン)」を名乗るロシア系ハッカー集団のサイバー攻撃を受けて大混乱に陥っている。ファイルを暗号化して身代金の支払いを迫るランサムウェア(身代金要求型ウイルス)に乗っ取られ、酒類や飲料、食品の受注や出荷業務が麻痺。コールセンター業務も停止を余儀なくされた。ビール6工場を含む国内約30工場は順次、操業を再開しつつあるものの、事業の根幹ともいえる「受注出荷システム」がストップしているため「全面復旧とは程遠い状態」(事情通)だ。
 営業の現場では悪戦苦闘が続く。卸売りや小売りなど取引先からの受注を電話やファックスで受けて営業所ごとに手入力で表計算ソフトに落とし込み、そのデータをもとに従業員が製造部門や物流部門と調整したうえで出荷する。IT業界関係者からは「基幹システムが破壊されて事業の継続すら危ぶまれる事態。復旧は困難を極めるのでは」との見方もあがる。{br・・・

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