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連載

金融の世紀

第33回【邦銀を直撃した中南米融資の蹉跌】
黒木 亮

2025年9月号

 1973年の第1次オイル・ショックで急膨張したユーロダラーをブラジルとともに積極的に取り入れたのがメキシコだった。
 きっかけは、72年に、メキシコ湾岸近くに位置するレフォルマ油田群で、巨大な油層が発見されたことだ。76年には日量9万バレルに過ぎなかった同国の原油輸出は、80年には9倍以上の83万バレルへと急伸し、有力産油国として一躍脚光を浴びた。
 日本、カナダ、フランス、ブラジル、韓国などが政府首脳をメキシコ市に送り込んで石油外交を繰り広げ、メキシコ側は原油の安定供給の見返りに、原子力発電(カナダ)、鉄道(フランス)、石油精製(スペイン)などのプロジェクト実施を求めた。日本も、ラス・トゥルーチャス製鉄所拡張、四大港湾開発、鉄道電化といった案件に官民合同で取り組んでいく。
 こうしたプロジェクトを実施するため、メキシコ政府、ペメックス(国営石油会社)、アルトス・オルノス・デ・メヒコ(鉄鋼製品メーカー)、中南米最大級の財閥、アルファ・グループなどが、シンジケート・ローンでユーロダラーを大量に取り入れた。おりしも邦銀が国際業務に進出するタイミングで、邦銀は・・・

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