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トランプ政権が「歴史修正」に本腰

教育や文化で「保守史観」を強要

2025年10月号

 米国の教育現場が分断を深めている。民主党地盤の州や自治体では、教科書や教育カリキュラムの「左」への書き換えが進み、共和党地盤では「右シフト」が強まっている。中でも歴史教科書は、左右の分断が著しく、クリストファー・コロンブスなど歴史的人物の評価は州によって全く異なっている。
 ドナルド・トランプ大統領は「教育省解体」の大統領令に署名するなど、教育・文化行政の「右シフト」を全面的に進める構えだ。さらに歴史教育界で定着している「米国史」も、共和党右派の世界観を反映する形に改訂する意向である。歴史教育が全米各地で重要政治課題に浮上している。

スミソニアンへの「圧力」

 ワシントンD.C.の国立航空宇宙博物館は、人類史上初めて月面着陸に成功したアポロ11号や「月の石(標本)」などの展示で世界に名をとどろかせる。ワシントン観光の目玉の一つだ。
 この博物館を含め、首都周辺の19の博物館、施設群を「スミソニアン博物館」と総称する。文化施設として全米はもとより、世界中に多くのファンを持つだけでなく、展示・・・

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