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欧州を蝕む過激な「女性嫌悪」

背景に「新興ネオナチ」への支持

2025年10月号

 ジェンダー平等に関して日本の「お手本」だった欧州で、女性嫌悪(ミソジニー)の風が吹き荒れている。SNSなどで感化された一部の若者が過激化し、テロやネオナチに流れるなど社会問題化しているのだ。欧州の極右勢力にとっては、反フェミニズムが「反移民」に隠れたもう一つの論点ともなっている。
 フランス南東部の街で7月、ナイフ2本を所持し、女性を標的とする襲撃事件を計画したとして18歳の男が逮捕・起訴された。女性嫌悪を公言し、SNSでこの種の動画を熱心に視聴していたといい、仏テロ対策国家検察が「インセル(incel)」と呼ばれる男性優位思想を背景とするテロと認定した初のケースとなった。 
 インセルとは「不本意な禁欲主義者」「非自発的な独身者」を意味するネットスラングで、男性をフェミニズムやジェンダー平等によって権利を侵害された被害者とみなす。女性への支配欲や暴力などをむきだしにしたインセル・コミュニティ内部での過激化が欧米で問題になっている。
 英国では2021年に、女性蔑視や同性愛嫌悪を背景とした22歳の男による銃乱射事件が起き、女性嫌悪に基づく問題が欧州でいち・・・

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