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《世界のキーパーソン》スティーブ・ファインバーグ(米国防副長官)

巨額予算を切り盛りする「ハゲタカ」

2025年10月号

 米国防総省の今年度予算は約9600億㌦。円換算では140兆円を超え、日本の国家予算より大きい。そんなお化け官庁の切り盛りは、大企業経営に似ている。ケネディ政権時代に、「フォード・モーター」のロバート・マクナマラ社長が国防長官に任命されたように、多くの企業経営者がペンタゴン幹部に登用されてきた。
 ファインバーグの国防副長官起用も、こうした伝統の継承として見ることも可能だ。だが、大きな相違点がある。彼が経営していたのは、製造業の名門大企業ではなく、「ハゲタカ・ファンド」だったことだ。
 ファインバーグは1960年、ニューヨークのユダヤ系家庭に生まれた。父親の仕事はセールスマン。本人は詳しく語っていないが、名門プリンストン大学を卒業するまでの道のりは平たんではなかったようだ。卒業後は、投資銀行「ドレクセル・バーナム」に入社し、トレーダーになった。
 学資と生活費、ローン返済に追われる中、彼は不良債権を取り扱うファンドに目をつけた。経営難に陥った企業の社債を格安で買い取り、企業業績が上向いたところで高額で売り抜けるという商売だ。1992年、「サーベラス・キャピ・・・

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