大往生考 第71話
遠ざかる「理想の医療」
佐野 海那斗
2025年11月号
近藤誠医師が亡くなって3年あまりが経った。「患者よ、がんと闘うな」という主張は、多くの医師の反発を招いた。ただ、近藤理論は、様々な事情で理想的な医療が提供できなかった医師に、慰めを与える役割を果たす。
私が最近経験したのは、60代後半の男性患者のケースだ。地元の開業医から「白血球が多いため、精査をお願いしたい」と私のところへ紹介されてきた。私が週1回勤務する病院の地域には、私が専門とする血液内科や腫瘍内科の専門医が非常に少ないため、患者を紹介されることが多い。
初診時、白血球数は1万6千/μLに増加していたが、他の健康状態は良好だった。造血器疾患を疑い骨髄検査を施行したところ、慢性骨髄単球性白血病と診断された。
この病気は高齢者に多い血液のがんであり、ゆるやかな経過をたどりながら骨髄機能が失われていく。貧血、感染、出血を繰り返し、時に急性白血病に移行する。診断から数年以内に死亡することが多い。
若年の患者では、強力な抗がん剤治療が試みられる場合もあるが、高齢患者には輸血や感染症対策を中心とした支持療法が基本となる。白血球が増えれば・・・
私が最近経験したのは、60代後半の男性患者のケースだ。地元の開業医から「白血球が多いため、精査をお願いしたい」と私のところへ紹介されてきた。私が週1回勤務する病院の地域には、私が専門とする血液内科や腫瘍内科の専門医が非常に少ないため、患者を紹介されることが多い。
初診時、白血球数は1万6千/μLに増加していたが、他の健康状態は良好だった。造血器疾患を疑い骨髄検査を施行したところ、慢性骨髄単球性白血病と診断された。
この病気は高齢者に多い血液のがんであり、ゆるやかな経過をたどりながら骨髄機能が失われていく。貧血、感染、出血を繰り返し、時に急性白血病に移行する。診断から数年以内に死亡することが多い。
若年の患者では、強力な抗がん剤治療が試みられる場合もあるが、高齢患者には輸血や感染症対策を中心とした支持療法が基本となる。白血球が増えれば・・・









