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社会・文化

「ワイン王国」フランスの変調

価格狂騰と気候変動で苦境に

2026年1月号

 ワイン市場が世界的に落ち込んでいる。ウクライナ侵攻に伴うエネルギーコストの増大やインフレ、トランプ関税が引き起こした貿易摩擦や輸送費の上昇、気候変動による生産量の減少……。2025年は日本の愛好家が好むブルゴーニュやシャンパーニュの動きが陰りを見せた1年だった。
「ブルゴーニュの人気ドメーヌはヴィラージュなら売れるが、グランクリュは10万円を超すのが当たり前。普通にワインを動かせるのは2つ星や3つ星のレストランや上得意客を持つワインバーに限られる」と、大手卸売り業者の幹部は明かす。
 日本が第3位の輸出市場のシャンパーニュも動きが鈍い。コロナ禍以前は1本7千円前後だったノンヴィンテージが1万円近くまで上昇したのが原因だ。安定した大手メゾンを扱う輸入業者は「1万円の壁を超えると、レストランのバイ・ザ・グラスで食前酒を頼む際にもためらいが出る。小売りも以前ほど勢いがなくなった」と語る。
 シャンパーニュの値上がりはヨーロッパの動きに追随している。21年から25年にかけて、ポル・ロジェ、モエ・エ・シャンドン、ルイ・ロデレールなど主要・・・

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