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連載

現代史の言霊  第96話

4月の蛮行-「カナの虐殺」(1996年)
伊熊幹雄

2026年4月号

  パレスチナで同胞の血が流された
  ウサマ・ビンラーディン(「アルカーイダ」創設者)
 
  日本で「中東のカナ」と言えば、パリのルーヴル美術館にあるヴェロネーゼの傑作『カナの婚礼』を想起される人もいるだろう。幅約10m、高さ約7mの大作で、修復作業により、制作から460年以上経った今でも、見るものを圧倒する。
 婚礼の場では、宴の途中でぶどう酒が尽きた。聖母マリアがイエスにそのことを伝えると、イエスは六つの石の水がめに水を入れるよう指示した。その水が最高品質のぶどう酒に変わった。これがカナの婚礼の奇跡である。
 聖書で描かれる「カナ」の町は、レバノン南部に残っている。第2次世界大戦後は、イスラエル国家誕生の際の独立戦争やレバノン内戦といった、歴史的大事件の舞台になった。今回紹介するのは、ルネサンスの傑作が描く世界とは全く異なる、血なまぐさい事件の舞台としてのカナである。
 カナがあるレバノン南部は長らく、オスマン帝国領だった。19世紀以降は、欧州列・・・

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