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青森県に翻弄される電力業界 「泣く子と地元には勝てず」

2010年4月号公開

 


 国と電力業界が、青森県にまた一つ弱みを握られることになった。新たな弱みとは、日本が海外で使用済み核燃料を再処理した際に発生する低レベル廃液の扱い。海外で発生した放射性廃棄物は日本に返還しなければならないが、受け入れ先は青森県以外になく、国と電力業界は青森県にいいように振り回されている。

 三月六日(土)の早朝、直嶋正行経済産業相は青森県庁を訪ね、三村申吾知事との会談で、返還廃棄物の受け入れを要請した。会談の際、直嶋経産相から受け入れの申し出を受けると、三村知事は同席していた古川健治六ヶ所村長とともに数分間席を立つというパフォーマンスを披露。応接室には直嶋経産相がぽつねんと取り残される形となった。

 しかし、経産相以上に青森県にコケにされたのが電力業界だ。青森県はすでに経産相との会談がセットされていたにもかかわらず、それに先立つ四日前に森詳介電気事業連合会会長を呼びつけた。「経産相が要請に来る前に、事業者自らが訪れて、説明するのが筋」という理屈からだ。後日、経産相との会談がすでに決まっている以上、青森県からは「来ても回答は示さない」との意向を森会長周辺は聞いていたが、やむなく要請に応じるしかなかったという。

「泣く子と地元には勝てない」と電力関係者はよく自嘲気味に語る。特に青森県は核燃料サイクル施設が集中立地しており、ひとたびへそを曲げられれば、日本のエネルギー政策は危殆に瀕する。来年は青森県知事選も控えており、反原発派が知事になれば、その危機は現実化する。


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