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社会・文化

日本から「船乗り」が消える日が迫る

もはや「海洋国家」とは言えない

2010年8月号

「われは海の子」と小学校唱歌で歌われ、「船長」が子供たちの憧れの職業であった海洋国家・日本はどこへ行ったのか? 一九七〇年代半ばに五万七千人を数えた日本人外航船員の数は今や二千五百人を切り、この数字は女性自衛官の数より少ない。若い世代には、異国への強い憧れを伴った「マドロス」(オランダ語で船員の意味)という単語も死語に近いようだ。
 だが、ノスタルジーに浸っている余裕はない。貿易量の九九・七%を外航海運に頼る日本にとって、日本人外航船員の確保は今も昔も水やパンと同じくらい欠かせないものだからだ。このまま進めば確実に、四周を海に囲まれながら海上輸送の担い手はほぼ外国人という由々しき事態が到来する。
 日本人外航船員の確保なくして国の安全保障なし。海からの豊かな恩恵を享受するだけでなく、海洋国ならではのリスクと必要な対応をこの夏、改めて考え直すべきだろう。

「朱鷺と同じ」


「海外航路の開設を通じ、日本の国際化や日本の自主独立を勝ち取る気概に駆られた」
 そう振り返るのは・・・