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連載

日本の科学アラカルト9

放射性廃棄物を「処理」する高速中性子という手段

2011年5月号

「冥界の王(Pluto)」
 この言葉を語源に持ち、「人類が生み出した最悪の毒物」と呼ばれる物質がプルトニウム(Pu)だ。大震災を契機として、その危険性がにわかに身近に迫る事態となった。Puの放射能が半分に減るまでの期間(半減期)が二万四千年であると報道されている。これは正しいが、正確ではない。
 まず、ウラン(U)とPuの混合燃料(MOX燃料)を使用している「三号機」のみに、この物質が存在するわけではない。Uを原子炉で使用する過程で生まれるのがPuであり、運転中だった一号機、二号機はもちろん、「保管プール」に多数沈んでいる使用済み燃料にもPuが存在する。
 そして、Uを使用して生まれるPuは一種類ではない。そもそも使用される自然界のUにも質量数の異なるU235やU238が存在する。原子炉内ではU238が中性子を捕獲してU239となる。それが二度のβ崩壊を経てPu239に変化する。これが「半減期二万四千年」の物質だ。しかし、原子炉の運転を続けると、さらに中性子を吸収することでPu240に変化する。微量だが、質量数が241、242の同位体も生じる。・・・