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経済

《クローズ・アップ》橋本 徹(日本政策投資銀行社長)

電力各社への融資で手腕問われる

2011年8月号

 約三年前に民営化された日本政策投資銀行の第二代社長に橋本徹・元富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)頭取が就任した。初代の室伏稔社長が畑違いの総合商社の伊藤忠商事出身だったのに対し、大手都市銀行の頭取経験者の起用に金融界からは歓迎する声が多い。だが、政策投資銀行の内部では「金融のプロだけに民間の視点も取り込んだ業務改革や戦略転換に動くのでは」との警戒感も出ており、必ずしも歓迎ムードばかりではない。
 東日本大震災によって政策投資銀行は正念場を迎えている。福島第一原発事故で事実上、民間企業としての経営の自主性や財務の健全性などを喪失した東京電力向けに、総額四千五百億円を融資しており、融資額では銀行・保険業界でトップクラスだからだ。もともと旧日本開発銀行時代から電力業界は主力の融資先で、東電、関西電力などでは融資元の上位を占め続けてきた。とりわけ原発の建設資金には民間銀行を先導する形で、積極融資してきた歴史もある。
 それが今、不良債権化するリスクにさらされているだけに、橋本新社長もゆっくり行内状況をみている余裕はない。民営化されたとはいえ、政府系金融機関として、・・・