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社会・文化

小説とは違う「江戸学」の魅力

再評価すべき日本の「封建制度」

2012年5月号

 江戸時代を舞台とした時代劇や時代小説は、人気の分野である。そこでは、厳しい身分制度のもとでの悲劇や、それとは裏腹の人情あふれる市井の人々の姿が描かれる。いわば、現代では忘れられた日本の良さが強調されるのが一般的である。  しかし残念ながら、そうした時代劇や時代小説は、古い江戸時代像にとらわれていることが多い。また、かつて教科書で教えられている江戸時代像も、現在の「江戸学」研究の状況から見れば問題が多い。たとえば、「士農工商」と言われる身分制度であるが、実際には武士と百姓・町人に区分されているだけである。武士は支配身分であり、百姓は村に属する被支配身分、町人は城下町などの町に属する被支配身分ということである。ちなみに百姓には、農民だけでなく、漁民や杣人など他のさまざまな生業に従事する者も含まれる。そして、こうした身分は、意外に流動的なものである 。  近年、歴史研究の一分野として見直される江戸学の一層の普及によって、時代劇や時代小説によって刷り込まれていた「常識」を覆す、江戸時代の真の姿が浮き彫りになりつつある。

「厳しい身分制度」の真の姿

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