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WORLD

崩壊する米「郊外型コミュニティ」

いまや再生不能の瀬戸際に

2012年8月号

 米国東海岸、ヴァージニア州プリンス・ウィリアム郡はワシントンD.C.を中心とするメトロポリタン地域の一角で、首都に通うホワイトカラーが多く住む住宅地だ。  同郡では、差し押さえで競売にかけられた家がまったく売れず、歯が抜けたように多くの空き家が点在している。そして、新たな空き家が現在進行形で生まれているという。これは、この地の不動産会社が「郊外コミュニティの終焉」と題したウェブ上のコラムで描いた町の姿だ。  これが工業地帯周辺ではさらに深刻である。たとえばデトロイト市でも売れないために廃屋となっている家並みが街の至るところに見られる。同市とミシガン州政府はこうした廃屋を既に四千五百戸解体し、さらに九月までに一千五百戸解体する計画を発表している。また、高級住宅地でもローンが五百万ドルを超える住宅の差し押さえ件数が急増している。  こうした光景は、この二地域だけではなく、全米中に広がっている。問題は不動産市況の低迷だけではない。冒頭の不動産会社が指摘するように、郊外で確実に進行するコミュニティ(地域社会)の破壊と、将来に落とす影だ。

郊外への黒人の流入も

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