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連載

続・不養生のすすめ26

二十歳のグルメはいない
柴田 博

2013年2月号

 つい半世紀くらい前までは、人間は年をとるにつれ、能力も人格も劣化していくと考えられていた。老年学を意味する「ジェロントロジー」ということばは、一九〇三年、後に、ヨーグルト菌の効用を発見した功績によりノーベル賞を受賞したロシアの研究者メチニコフにより創られた。当時彼は、フランスのパスツール研究所の副所長を務めていた。

 老年学は、ルネサンス以降、タテ割り化しタコ壺化した学問の壁を取り払うために生まれたと考えられるが、しばらくは、要素還元的な研究方法しかなかった。人間の加齢変化をみる場合にも、機械の部品のアナロジーとして、臓器や組織をみて、やがて顕微鏡の進歩と共に細胞の内部までもみるようになった。

 人間の臓器をみていくと、目は四十歳で老視が始まり、耳も五十歳代で高音部の難聴が始まる。一九六二年アメリカの細胞老化学の権威ストレーラーは老化の四つの定義の一つに「有害性」をあげた。人間は年をとるにつれ、能力も人格も劣化していくというコンセプトが次第に世界を席巻していったわけである。いまだにこの思い込みは生き続けている。

 しか・・・